21時を過ぎても、娘はまだスマホのゲームをしていた。
その日は午前中、学校をがんばって行ってくれていた。
だから最初は、「ちょっとくらいならいいか」と思っていた。
「途中まで見てほしい」
そう言われて、一緒に画面をのぞき込む。
楽しそうに話す姿を見ながら、私も少し安心していた。
でも、何度「もうおしまいね」と言っても、なかなかやめられない。
その“ちょっとだけ”が、どんどん長くなっていくのを見ているうちに、私の中にじわじわイライラが溜まっていった。
10分も待てない私は、「もういいや」と先に洗面所へ向かった。
すると娘が、足にぎゅっとしがみついてきた。
やっとゲームをやめて、甘えたかったんだと思う。
でも、その時の私はもう余裕がなかった。
思わず、足を強めに振り払ってしまった。
痛かったのか、怖かったのか、
「ママぁ…」と泣きながら追いかけてくる娘。
私は冷たい顔のまま、歯を磨いていた。
“なんでこんな態度してるんだろう”
そう思っているのに、気持ちがどうにもできなかった。
「21時に寝るって、いつも言ってるよね?」
「なんでまだやってるの?」
「明日もあるよ?」
静かだけど強い声で言うと、娘はもっと泣いた。
声を出さないように、ぎゅっと堪えるように。
本当は優しくしたかった。
でも、その場ではどうしてもできなかった。
しばらくして、娘が泣き止んで、ぎゅっと抱きついてきた。
その背中に手を回しながら、私はちゃんと、
「さっきはごめんね」
と伝えた。
1年前と比べたら
1年前は、外にも出られなかった。
ごはんも食べられない日があったし、
お友達とも遊べなかった。
それを思えば、今は本当に良くなった。
外にも行ける。
ごはんも食べられる。
お友達とも笑って遊べる。
こんなに回復してきたのに、私は“少しの夜更かし”でムキになっていた。
元気になってきたからこそ、「ちゃんとしてほしい」と思ってしまう。
“まぁいっか”ができる日もある。
でも今日は、私が疲れていたんだと思う。
娘をぎゅっと抱きしめながら、「ごめんね」と伝えた。
伝わっているといいなと思いながら、髪を乾かした。
私が揺れる日、娘も揺れる日
私の虫の居所次第で、怒られない日もあれば、怒ってしまう日もある。
それって娘からしたら、きっと落ち着かないよね。
ふと、「かわいそうだな」と胸が痛くなった。
子どもに優しくしたいのに、できない日がある。
ちゃんとしたいのに、感情が追いつかない日がある。
はぁ…難しい。
そんなふうに思っていた時、去年カウンセラーさんに言われた言葉を思い出した。
「まじめな人ほど、大変なんですよ」
その言葉に、少し救われる。
完璧なお母さんにはなれないけど、
ちゃんと「ごめんね」を伝えられる母でいたい。
そう思った夜だった。

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